桜も見頃を終え、春の風が心地よく感じられるようになりました。ようやく春の訪れを実感する今日このごろ、みなさまいかがお過ごしでしょうか。私といえば、何ともこの歳にして、初めて帯状疱疹に罹ってしまいました…。日頃の行いが祟ってしまったようです。幸い軽症の方だと思われますが、この痛みはなかなか厳しいものです。そこで、皆さまにも共有しつつ、是非とも予防・早期治療の大切さをお伝えしたいと思います。
帯状疱疹とは?
帯状疱疹(たいじょうほうしん)、みなさんも一度は聞いたことのあるかと思いますが、「なぜ起こるのか?」「どのように治療するのか?」を正しく理解している方は意外と少ないかもしれません。帯状疱疹の病態や治療・予防などについて、お話します。
帯状疱疹の原因は「昔かかった水ぼうそう」
日本人の成人の約9割が、過去に水ぼうそうにかかっていると言われています。帯状疱疹は、水ぼうそうの原因ウイルス(水痘・帯状疱疹ウイルス:VZV)が再び活動することで起こります。子どもの頃に水ぼうそうにかかると、ウイルスは完全に消えるわけではなく、神経の根元(神経節)に潜んだままになります。
そして、
- 加齢(おおむね50歳を過ぎるとかかりやすい)
- 疲労・不眠
- ストレス
- 病気や免疫力の低下
などをきっかけに再活性化し、帯状疱疹として発症します。
実際、80歳までに約3人に1人が経験するとされる、非常に身近な病気です。
↓分かりにくい初期の帯状疱疹

↓典型的な帯状疱疹
まず「痛み」が先に来る
帯状疱疹の最大の特徴は「強い痛み」です。
典型的には以下のように進行します:
① ピリピリ・チクチクする痛み(発疹の2~7日前)
→この時はまだ発疹が出ないため、実際に腰痛?腹痛?として診断がつかないことが多々あります。
② 赤い発疹
③ 水ぶくれ(水疱)が帯状に広がる
この皮疹は神経に沿って「体の片側だけ」に出るのが特徴です。
痛みの表現としては
- 焼けるようなヒリヒリ、ピリピリした痛み
- 刺されるようなずーんとした痛み
- 触れるだけで痛い(アロディニア)
などがあり、日常生活に大きく影響します。夜に寝られないこともしばしばあります。
合併症で最も問題になる「帯状疱疹後神経痛(PHN)‥」
帯状疱疹で特に注意すべきなのが、帯状疱疹後神経痛(PHN)です。
皮膚が治った後も痛みだけが残る状態で、
発症率は約10~50%とされ、高齢者ほどリスクが高くなります。
8人に1人は3か月、20人に1人は1年間、痛みが続くと言われています…。
その他にも
- 目に出ると視力障害
- 顔面神経麻痺(ラムゼイ・ハント症候群)
- 脳炎・髄膜炎
など、重い合併症を起こすこともあります。
治療の基本は「できるだけ早く」
帯状疱疹の治療で最も重要なのは、早期治療(発症後72時間以内)です。
● 抗ウイルス薬
ウイルスの増殖を抑え、症状の悪化や後遺症を防ぎます。
代表例:
- バラシクロビル(バルトレックス)
- ファムシクロビル(ファムビル)
- アメナメビル(アメナリーフ)
これらは「できるだけ早く開始する」ことが重要です。ここで治療期間、症状の改善、後遺症の残り方が変わります。
● 痛みの治療
痛みに応じて段階的に治療します:
- 軽い痛み:アセトアミノフェン、NSAIDs
- 強い痛み:オピオイド、神経障害性疼痛治療薬
- 難治例:神経ブロック
痛みのコントロールは、PHN予防の観点からも非常に重要です。
予防のカギは「ワクチン」
近年、帯状疱疹は予防できる病気になっています。
現在主に使われているのは以下の2種類:
- 生ワクチン(弱毒生水痘ワクチン)
- 不活化ワクチン(シングリックス)
特に不活化ワクチンは効果が高く、発症やPHNの予防に有効とされています。
一般的には
👉 50歳以上の方
👉 免疫力が低下している方
に接種が推奨されています。
※当院でもワクチンは実施しております。また、65歳以上の方に対しては定期接種(公費助成がある)の機会がありますので、こちらをご確認ください。→ 京都市:高齢者帯状疱疹ワクチンの定期の予防接種について
糖尿病と帯状疱疹の関係
こちらは、私も実臨床の場面で実感します。
● 糖尿病の方は発症しやすく重症化しやすい
糖尿病があると、
- 免疫機能(特に細胞性免疫)が低下
- ウイルスへの抵抗力が弱くなる
ため、帯状疱疹の発症リスクが上昇します。
実際に疫学研究では、糖尿病患者は非糖尿病者に比べて約1.2~1.5倍発症しやすいと報告されています。
● 重症化・長引きやすい理由
糖尿病の方ではさらに
- 症状が強く出やすい
- 皮疹の治りが遅い
- 神経痛が残りやすい(PHNリスク上昇)
といった傾向があります。
これは、①高血糖により神経障害や血流障害が起こる、②炎症が長引く、ことが関係しています。
糖尿病の方にとって帯状疱疹は、単なる皮膚の病気ではなく、神経の合併症に近い側面もあると言えます。
● 血糖コントロールも重要な予防
帯状疱疹予防の観点からも、血糖コントロールを良好に保つことは非常に重要です。
HbA1cが高い状態が続くと、感染症全般のリスクが上がるため、帯状疱疹も例外ではありません。
帯状疱疹は「早期発見・早期治療・予防」
帯状疱疹は誰にでも起こり得る病気ですが、
- 痛みが出たら早めに受診
- 72時間以内の治療開始
- ワクチンによる予防
この3つで、重症化や後遺症を大きく防ぐことができます。
「なんとなく痛い」「ピリピリする」と感じた段階で受診することが、最も重要なポイントです。
以上、簡単にまとめてみました。まさか自分は大丈夫、と思わずに、もし心配なことがあればいつでもご相談してくださいね。季節の変わり目で体調も揺らぐ時期、くれぐれも無理をせず春を楽しんでください。
■ 参考文献
- 帯状疱疹診療ガイドライン2025(日本皮膚科学会)Taijouhoushin2025.pdf
- 渡辺大輔:帯状疱疹ワクチンと疫学(ウイルス学雑誌)帯状疱疹ワクチン
- 厚生労働省:帯状疱疹ワクチンファクトシート(2024)001328116.pdf
- ペインクリニック治療指針・神経障害性疼痛ガイドライン関連 日本ペインクリニック学会
- 帯状疱疹の臨床像と治療(疼痛管理指針)p095-100 治療指針4版 第03章A.indd
おおやぶ内科・整形外科 副院長 大藪 知香子
糖尿病内科専門医・指導医 総合内科専門医