GLP-1とは? ダイエット薬?(ではありません。)
みなさま、『GLP-1』というお薬は聞いたことがありますか?
正式には『GLP-1受容体作動薬』というお薬で、日本では数種類の注射薬と1つの経口薬が処方可能です。
(※GLP-1 ; Glucagon Like Peptide-1)
糖尿病治療の中でも非常に期待度の高いお薬で、その特徴としては何といっても『体重が減る』ことです。
(個人差があり、お薬の用量にもよりますが、―3kg~-10kgほどの印象です。)
そのため、近年はダイエット薬として自由診療で処方されるケースもあり、世間でも注目を集めています。
ただし日本糖尿病や製薬会社より、糖尿病でない方に対する安全性が日本人においては確認されていないため、『あくまでも2型糖尿病患者さんに対する治療薬として、適正に使用するように』との勧告が出ています。
参考;日本糖尿病学会からの見解
逆に言えば、それほど減量効果の高いお薬なのです。
肥満、または内臓脂肪が蓄積した2型糖尿病患者さんにとって、大変優れた効果をもたらします。
『GLP-1』というのは、小腸から分泌されるホルモンです。
食事をして食物が腸に届く
↓
小腸からGLP-1が分泌される
↓
GLP-1が、膵臓からのインスリン分泌を助ける
↓
しっかりインスリンが作用して、血糖が下がる
GLP-1を含むインクレチン関連薬というものは、血糖を下げる効果が安定しており、
かつ低血糖を起こしにくいため、今や糖尿病治療の主流となっています。
さらにGLP-1の作用として、次のようなものが研究で明らかになっています。
・脳に働いて食欲をおさえる
・心臓を保護する
・胃での消化を遅らせる(過食を防ぐ)
・肝臓での糖の生成をおさえる
・腎臓での蛋白尿を減らす
・筋肉へ糖が取り込まれるよう促す
・骨の形成を促す
リベルサス®︎の長期処方が解禁!
2021年2月、GLP-1受容体作動薬の飲み薬であるリベルサス®︎が発売されました。
発売から1年未満の新薬は、原則として2週間しか処方で出来ないようなっています。
この2021年12月1日、ようやくリベルサス®︎の長期処方が解禁されました。
画期的な体重減少作用をもつGLP-1受容体作動薬ですが、もとは自己注射薬(自分で注射を打つタイプ)しかありませんでした。
日本では、2010年に1日1回注射型のビクトーザ®︎やバイエッタ®︎が登場し、その後、2013年にリキスミア®︎が、2015年には週1回注射のビデュリオン®︎やトルリシティ®︎が発売されました。(それぞれに特徴や違いがあり、患者さんの生活背景や血糖パターンにより選択します。)
さらに、2020年6月に週1回製剤が新たに発売され、これがオゼンピック®︎です。
このオゼンピック®︎の注目すべきポイントは、これまでのGLP-1受容体作動薬と比べて体重減少効果が高いということです。2018年の米国の糖尿病学会で、『オゼンピック®︎には体重-10%の減量効果がある』との報告があり、私も期待度の大きいお薬でした。もちろん、血糖コントロールの指標であるHbA1cを下げる効果にも優れていることが明らかになっています。
そしてこの度、長期処方が解禁となったリベルサス®︎は、オゼンピック®︎を内服薬へ改良したものです。これまでのGLP-1受容体作動薬は、そのまま内服しても胃の消化酵素で分解されて効果を失ってしまう性質がありました。このリベルサス®︎は、胃の酵素から保護され、かつ胃での吸収を促すように改良され、内服薬としての効果が発揮できるようになりました。
これまで注射薬しか存在しなかったGLP-1受容体作動薬において、内服薬の登場は非常に画期的なことです。
当院でも、食事や運動による体重減量がなかなか難しい2型糖尿病患者さんに対して、
積極的にGLP-1受容体作動薬での治療を選択肢に入れております。
冒頭でもお示しした通り、GLP-1受容体作動薬には体重減量効果だけでなく、
糖尿病の重大な合併症である心臓病や腎臓病、脂肪肝、早期老化を予防することが期待されます。
さらに体重が減ることで、血圧や脂質(コレステロール・中性脂肪)、肝機能や脂肪肝の改善、
腰痛・膝関節痛の改善など、様々なメリットが考えられます。
ただし副作用として、便秘や下痢、食欲不振、吐き気、膨満感などお腹の症状が出る場合もあります。
用量調節の必要な薬剤オゼンピック®︎やリベルサス®︎は最小量からスタートして、慎重に経過をフォローアップします。
長引くコロナ禍で、間食が増えたり運動が出来なかったり、
なかなか体重コントロールがうまくいかない方も多いかと思います。
良好な体重へ近づけるよう、お手伝いできればと思います。
おおやぶ内科・整形外科 副院長 大藪 知香子
糖尿病内科専門医・指導医 総合内科専門医