前回、子宮頸がんワクチンの積極的勧奨の再開についてお話しました。

★子宮頸がんワクチンの大切なお話 vol.1★ 

 

今回は、実際に公費で接種可能となる対象年齢、国による接種控えのため機会を逃した方の対象年齢、救済期間、またワクチンの種類についてお話します。

参考;京都市:HPVワクチンの定期予防接種について

 

ヒトパピローマウイルスワクチン(HPV)の公費対象

・小学校6年生~高校1年生の女の子

・過去に積極的な勧奨を受ける機会を逃した方(重要)

平成9年4月2日~平成18年4月1日生まれの女性について、国が定めたワクチン救済期間(令和4年4月1日~令和7年3月31日)に、公費で接種することが可能です。平成18年4月2日~平成20年4月1日生まれの女性も,令和7年3月31日までは公費対象となります。

※令和4年4月1日以前に接種した場合は全額自己負担となります。ご注意ください。

 

HPVワクチンの種類

 

HPVには200種類以上の遺伝子タイプがあります。そのうち約 15 種類は高リスク型 HPV と呼ばれ、10 年以上も感染し続けた後に子宮頸がんやその他のがん(外陰部がん、膣がん、陰茎がん、肛門がん)を引き起こすことが分かっています。

中でも、HPV 16 型、HPV18 型は、子宮頸癌発症の70%に関わっていると言われています。

参考;Silvia de Sanjose et al.: Human papillomavirus genotype attribution in invasive cervical cancer: a retrospective cross-sectional worldwide study. Lancet Oncology, 11: 1048-1056, 2010. (The Lancet Oncology)

日本での子宮頸癌の患者数は 1990 年代後半から増加傾向にあり、特に 20 代後半~ 40 代前半の若年の間で癌にかかってしまう方、がんにより命を落とす方が増加しています。

 

現在、日本で公費として受けられるHPVワクチンには、2種類のワクチン『サーバリックス®(グラクソ・スミスクライン』『ガーダシル®(MSD)』が用いられます。いずれも、子宮頸がんを引き起こしやすいHPV16型とHPV18型の感染を防ぐことができます。6か月間に3回接種することにより、子宮頸がんの原因となるHPV感染の50%~70%を防ぐことができます。また、HPVは、尖圭コンジローマ、中咽頭がん、肛門がんなど、男性がかかる病気の原因ともなり得るため、男性におけるHPVワクチン接種も世界的に拡がっています。2020年12月より、9歳以上の男性においては『ガーダシル®』のみ接種可能となりました。ただしこちらはまだ公費外(自費)となります。

さらに、2020年7月に3つ目のワクチンとなる『シルガード9』が承認されました。これはHPV16型とHPV18型を含む9種類のHPVの感染を防ぐことができ、子宮頸がんの原因となるHPV感染の90%を防ぐことができます。非常にがん予防効果は高いと言えますが、こちらは公費外(自費)の高価なワクチンです。

 

公費での接種では、『サーバリックス®』『ガーダシル®』2種類のワクチンから自由に選択できます。ただし、1回目のワクチンを接種した後、2回目・3回目で別種類のワクチンに変更することはできません。

 

3種類のワクチンの比較に関しては、こちらを参照ください;HPVワクチン- Know VPD! 

これまでの報告によると、

・サーバリックスの方が、長期的な効果は高い可能性があるものの、副反応がやや多い

・ガーダシルは副反応が少なく、子宮頸がんの他に尖圭コンジローマも予防も可能

このあたりが両者の違いとなりますが、いずれも子宮頸がん予防効果に大きな違いはないようです。

 

副反応について

疼痛・運動障害

HPVワクチンを接種した後、身体の広範囲における痛み、手足の動かしにくさ、不随意運動など様々な症状が報告されています。この原因として、神経学的な疾患、中毒、免疫反応などの可能性も考えられましたが、因果関係の根拠に乏しく、最終的には機能性身体症状(何らかの身体症状はあるものの、検査等で異常が見つからない)であると考えられています。

症状としては、①感覚異常(様々な場所の痛み、感覚が鈍い、しびれる、光に対する過敏)、②運動障害 (脱力、歩行困難、不随意運動)、③自律神経障害(倦怠感、めまい、嘔気、睡眠障害、月経異常)、④認知機能障害(記憶障害、学習意欲の低下、計算障害、集中力の低下)等、多岐に渡ります。痛みは一部から広範囲へ広がることもあり、運動障害は、 症状が変動したり、注意がそれた時に症状が回復したり、機能性障害に特有な所見がみられることもあります。

 

救済措置

HPVワクチン接種によって健康被害が生じ、医療機関での治療が必要になったり、生活に支障が出るような障害が残ったりした場合には、予防接種法に基づく救済(医療費・障害年金等の給付)を受けることができます。給付申請を検討する場合には、診察した医師、保健所、お住まいの市区町村の予防接種担当課へご相談ください。

参考;HPVワクチンに関するQ&A|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

 

おおやぶ内科・整形外科 副院長 大藪 知香子

糖尿病内科専門医・指導医  総合内科専門医