当院では、糖尿病患者さんを対象に、看護師が必要に応じて療養指導を行っています。

 

療養指導の内容は、

・血糖測定の方法インスリン注射などの注射薬の自己管理に対する指導

・糖尿病合併症の指導

・糖尿病足病変の予防に対するフットケア

を実践しています。

 

糖尿病の患者さんは足の爪や皮膚に病変が生じやすく、治療が遅れると急速に重症化して潰瘍や壊疽に至ることがあります。早期にリスクを把握して、適切なフットケアによって足病変を未然に防ぐことが大切です。

 

フットケアはなぜ大切なの?

 

世界のどこかで30秒に1足が糖尿病のために切断されていると言われています。    

 

糖尿病で血糖値が高い状態が長く続くと、糖尿病の3大合併症のひとつである神経障害や、動脈硬化などが起こります。動脈硬化は血流障害をおこし、結果、足にさまざまな異常が出やすくなります。また、高血糖の状態はからだの抵抗力を落とすため、細菌感染がおこりやすくなります。さらに、糖尿病の合併症である糖尿病網膜症などにより視力が低下してくると、傷などの足の変化に気づきにくく、放置したまま足潰瘍(かいよう)壊疽(えそ)などの重大な病変(糖尿病足病変)に進行してしまうことがあります。

 

大切な足を守るためには、血糖値を良好にコントロールするとともに、ご自身の日々のお手入れ(フットケア)がカギになります。ご自身の足の状態を知り、その状態に合わせた方法で手入れをしていくことが大切です。

普段から足に傷を作らないよう細心の注意をはらい、毎日よく足を観察してケアを行うことで糖尿病足病変を予防することができます。

 

なぜ糖尿病から足病変がおこるのでしょう?

参考;稲垣 暢也 先生, 糖尿病足病変とフットケア, アルタ出版社株式会社,2015.)

 

糖尿病神経障害

足の感覚が鈍くなり、痛みを感じにくいため、ケガややけどなど、足の異常に気づきにくくなり、放置してしまいがちになります。また、足や足の指に変形が起こり、タコや靴擦れができやすくなります。

 自覚症状の例:砂利の上を歩いているようだ、足の裏に膜が張ったみたい、足がピリピリ、ジンジンする。

 

血流障害

動脈硬化などで足の血流が悪くなると、傷を治すために必要な血液や酸素が行き渡らず、傷が治りにくくなり、潰瘍(かいよう)や壊疽(えそ)まで進んでしまうことがあります。

 自覚症状の例:少し歩くと足が痛くなって歩けなくなるが、しばらく休憩するとまた歩ける(間欠性はこう)、足の冷え(冷感)。

 

抵抗力の低下

からだの抵抗力が低下し、細菌に感染しやすくなったり、傷口が化膿しやすくなったりします。

 

 

フットケアのすすめ

 

① 毎日足を観察しましょう

・潰瘍や壊疽の予防のためには「早期発見、早期治療」が大変重要です。毎日足の隅々まで見て触って、よく観察しましょう。

・見えないところは鏡を使ったり、ご家族等に協力してもらったりしましょう。

・長時間歩いた後や運動後は特に念入りに観察しましょう。

② 足の清潔を保ちましょう

・感染を防ぐためには清潔を保つことが重要です。

・石けんをよく泡立てて、柔らかいタオルやスポンジで優しく洗いましょう。

・指の間も忘れずに洗いましょう。

・洗った後は水気をよく拭きとりましょう。皮膚を傷つけないよう、こすらずに押さえるようにして拭き取りましょう。

・皮膚が乾燥している場合は保湿クリームを塗って保湿しましょう。ただし、指の間には保湿クリームはさけましょう。

湿って水虫の原因になることがあります。

 

③ 爪は切り過ぎないようにしましょう

・深爪に注意しましょう。

・爪の角は、深く切り落とさないようにしましょう。

・巻き爪になっている場合は長めにまっすぐに切りましょう。

 

④ 自分の足に合った靴をはきましょう

・つま先に1センチ程度の余裕があり、足の形に合った靴を選びましょう。

・革や内貼りが柔らかく、靴の内部に硬い縫い目のない靴を選びましょう。

・クッション性がよく、靴底が安定している靴を選びましょう。

・運動や散歩をする時は足首が固定されるよう、紐やマジックテープが付いた運動靴を履きましょう。

・神経障害がある方は靴の中に異物がないか、よく確認してから履きましょう。

 

⑤素足を避け、靴下を履いて、傷から足を守りましょう

・靴下を履くことで水虫の予防や足の保護になります。

・吸湿性の良い綿素材の靴下を選びましょう。

・内側の縫い目がゴツゴツしていない、きつすぎない物を選びましょう。

・重ね履きは血行を妨げてしまうことがあるので避けましょう。

・水虫予防のために5本指靴下もお勧めです。

 

⑥ やけどに注意しましょう

・湯たんぽや電気あんかなどの低温やけどに注意しましょう。

・バスや電車の温風吹き出し口にも注意しましょう。

・夏の炎天下では、素足で砂浜やプールサイドを歩くと、やけどをする場合がありますので要注意です。

 

 

⑦ 自己処置は大変危険です。もし傷を作ってしまったら

・タコやウオノメを自分で削ったり、市販薬を使ったりすることは危険です。専門の医師に相談しましょう。

・傷を作ってしまった場合は流水できれいに洗い流し、清潔なガーゼや絆創膏を貼って保護し毎日よく観察しましょう。

・傷の周囲が赤くなったり、熱を持ったり、はれたり、うみが出たりしたら、すぐに医療機関を受診することが大切です。

 

 

 

  👣当院では予約制でフットケア外来をしています。

  足のことでお困り方は、お気軽に医師や看護師へご相談下さい。

 

おおやぶ内科・整形外科

看護師・糖尿病療養指導士

森 友美