肥満と肥満症の違いは?
『肥満』とは?
・体脂肪が過剰に蓄積した状態
・BMI ≧ 25以上
『肥満症』
・肥満 + 糖尿病、高血圧、脂肪肝、睡眠時無呼吸症候群などの健康障害を1つ以上合併している状態
・放っておくと、心筋梗塞・脳梗塞・がん・認知症など、命に関わる病気のリスクが高まる
『無理に痩せる事』が目的ではありません。
肥満症の治療目標は、内臓脂肪を減らして病気を予防・改善すること。
意外に思われるかもしれませんが、現在の体重のたった3%減で、血糖・脂質・血圧・肝機能などの検査値が改善することが分かっています。たとえば体重80kgの方なら、2.4kgの減量が目標です。無理なく3~6か月で達成できます。
注目すべきは『内臓脂肪』
脂肪には「皮下脂肪」と「内臓脂肪」があり、特に内臓脂肪は糖尿病や動脈硬化、高血圧の原因になります。
腹囲(ウエスト)の測定で、男性85cm以上、女性90cm以上の場合は内臓脂肪蓄積が疑われます。
肥満症の治療5つの柱
-
食事療法
まずは1日の摂取カロリーを減らすことが基本。糖質・脂質を控えつつ、筋肉を減らさないようタンパク質(特に植物性の大豆、魚介類)はしっかりと。ノートやアプリを使ってのレコーディング法(食事記録)は以前からよく使われていますが、やはり続かない事が多く、ご自身に合った食事量の見える化が大切です。コツは、ある程度、1日(朝・昼・夕)や1週間(平日と休日)の食事メニューのパターンを決めておき、外食する事が決まっているなら前後の日は控え目にするルール作りをしておくことです。その中で、減らしてもストレスがないものから減らす(ご飯を〇g減らす、パンを菓子パンからシンプルはパンに変える、揚げ物は〇個まで)、また取り分けスタイルを止めてプレート式(あらかじめ食べる量を決める)にするのも良いです。残りものはその日に食べず翌日に回せるようにしておく、いつもより少なめに作る、などなど。置き換え食(豆腐ダイエット、ブロッコリーダイエットなど)も有用ですが、飽きるとリバウンドのリスクもあるので、なるべく全体量を減らす事に慣れてください。飲料は基本的に無糖にしましょう。それから、実は定期的な他者チェックは意外と効果あります。クリニックで体重結果を伝える、ジムで体重を記録される等、他人の目や助言があると続きやすい人もいます。 -
運動療法
有酸素運動(ウォーキング・ジョギング・スイミング)に加えて、筋トレ(腹筋、腕立て伏せ、スクワット、マシンを用いたトレーニング)も組み合わせましょう。基礎代謝が上がります。一番簡単に出来て効率が良いものは、やはりウォーキングでしょう。実際に当院でもそれだけで体重がかなり落ちた方も何名かおられます。特に通勤に歩く、必ず毎朝時間を決めて散歩する、など習慣化すればとても強いです。もちろん、定期的にジムに行ける方はそちらがbetterです。当院では、生活習慣病(又は整形外科疾患)があり、治療に運動が必要と判断した場合、運動処方箋を処方することができます。これを持って指定のジムに行くと、疾患に見合ったプログラムを組んでもらえます(医療費控除あり)。ただし、ジムはお金がかかるし忙しくて…続かない、とのお声もよく聞きます。最近では本当に便利で、YouTube等の動画サイトで数多くの筋トレ、ストレッチ、ヨガ、体操などが紹介されているので、こちらも時間をしっかり決めて5分でも10分でも取り組むと筋力upに繋がります。何より、運動は始めるまでが億劫ですが、終わった後に後悔する人はほとんどいません! -
行動療法
毎日の体重測定を習慣にしてください。生活を振り返り(日記・レコーディングが有用)、体重が増えた原因を見つけましょう。イベントごとが多いと、外食が増える、忙しくて食事が不規則になる、買ってきたもので簡単にすませる等がみられます。季節によりおやつが増えることもよくあります(お餅や善哉、バレンタインチョコ、スイカや柿などの果物、クリスマスケーキ、旅行のお土産など)。また、暑さ、寒さ、雨・雪などで運動できません、もあります。他、コロナ禍ではそもそも外出できず体重が2~3年でかなり増えた方もおられました。せっかくの人生、全てを捨てる必要はもちろんありません!人生は楽しみながら、体重が増えないように日頃からスケジュールを頭に置きながら食事や運動を計画することは長い目でみて吉です。 -
薬物療法
医師の判断で処方される飲み薬や注射薬がありますが、あくまで食事・運動療法の補助として活用します。場合により保険適応となる事がありますが、多くは自費で扱われます。一時的に薬剤を使って体重が減ると、メンタル的にポジティブになったり、モチベーションが挙がるなどのメリットがあります。人によっては、依存(薬を使わないとリバウンドしてしまう、もっと痩せたい)、さらに健康被害(食欲不振、痩せ過ぎ、低栄養、骨粗鬆症等)を招くリスクもあるので、独自の判断ではなく、きちんと医師に相談することをおすすめします。 -
外科療法
高度肥満症で、他の治療では効果が不十分な場合に行われます(保険適用の手術あり)。
生活の中でできる工夫
-
目安を知ろう:脂肪1kgは約7,000kcal。1日200kcalのカロリー調整で、3か月で2.4kg減も可能。
-
100kcalってどれくらい?:ご飯小盛り半杯、ヨガ20分、ウォーキング20~25分ほど。
-
スマホアプリの活用:体重・歩数・食事を記録できる無料アプリ。継続のモチベーションになります。
最後に
今、様々なところで『スティグマ』との言葉を耳にします。スティグマ=いわれのない偏見、差別、社会的不利益。糖尿病の世界では、このスティグマに対して立ち向かい、擁護・支援していこうとの動きが盛んにおこなわれています(アドボガシー運動)。『肥満』という言葉にも通じるものがあります。肥満と言われる状態になった背景に、人それぞれの原因・理由があります。病気、妊娠・出産、仕事、ストレス、それから家庭環境。個人だけの問題ではない事が劣んどです。一人で抱えるとなかなか前に進まないことも多いかと思います。一方で、肥満がひとつの原因となって発症すると言われている病気は多くあります(がん、糖尿病、心臓病、腎臓病、脂肪肝、睡眠時無呼吸症候群、腰痛、膝関節症など)。肥満を解消することで、将来的な問題解決にもつながります。もし、悩んでいる方がいれば、周りからのサポートはとても力になります。お困りの方、当院へもお気軽にご相談ください。
おおやぶ内科・整形外科 副院長 大藪 知香子
糖尿病内科専門医・指導医 総合内科専門医