GLP-1受容体作動薬
※日本では美容目的(保険適応外)での使用を避けるよう注意喚起されています。
以前こちらでも紹介した通り、GLP-1受容体作動薬(以下、GLP-1RA)は今の糖尿病治療において中心的な立ち位置にあり、血糖降下作用、減量効果に対しては大きな役割を果たしていると言えます。日本では10年以上前から糖尿病治療薬として、また2024年2月からは抗肥満薬(限られた医療機関のみ)として認証され使われているお薬です。現在、主に4種類のGLP-1RAが処方されていますが、そのうち「オゼンピック」、「マンジャロ」、「ウゴービ」さらに新しく発売される「Zepbound」について、脱毛症やうつ病、自殺願望などの副作用が報告されています。
FDA Probes New Risks in GLP-1 RA Weight-Loss Drugs Like Ozempic and Wegovy
米国FDAでの調査
米国FDAから発表された副作用に関する報告書(2023年7~2023年9月)より、糖尿病のみならずダイエット目的での使用が拡大しているGLP-1RAにおいて、脱毛症、誤嚥、自殺念慮のリスクについて調査が進められているとのことです。「自殺念慮および自殺行動との因果関係は明らかでない」との結果も追加発表されています。
今回の報告書やCBCニュースによると、2024年9月までに、セマグルチド(オゼンピック、ウゴービ)、及びチルゼパド(マンジャロ、Zepbound)使用後の副作用として、自殺念慮・自殺行動の報告が201件、脱毛症が422件以上、誤嚥が18件報告されています。
現時点では、GLP-1RAと自殺念慮・自殺行動との明らかな関連はないとされていますが、FDAより「GLP-1RA使用開始後に、うつ病の発症またはうつ状態の悪化、自殺念慮、気分や行動の変調を来した場合は医療専門家に相談するように」と注意喚起されています。
製薬会社による副作用報告は?
①自殺念慮について
GPGO試験(SURPASS J-mono)において、マンジャロ5 mg群の2例で抑うつ気分が発現、
GPGP試験(SURPASS J-combo)において、マンジャロ15 mg群の2例でうつ病、
– https://medical.lilly.com/jp/
– https://medical.lilly.com/jp/
②脱毛症について
マンジャロによる脱毛の副作用の報告は確認できず(インタビューフォームより)。しかし、市販直後調査の副作用(
※推定使用患者数(2023 年 10 月 31 日時点):約 132,400 例
https://medical.lilly.com/jp/
他、皮膚に対する副作用報告
自殺念慮に関する副作用報告
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.
私の個人的な思い
これらを見る限り、GLP-1RAと脱毛症や自殺企図との因果関係は明らかでないとの事です。私自身、10年以上かけて保険診療内でGLP-1RAを処方してきましたが、このような副作用を経験したことは幸いにもありません。(皮膚の湿疹、アレルギー症状は経験があります。)これはあくまで私の勝手な推測ですが、GLP1-RAを使用する事で過度な体重減少が得られる反面、ホルモンバランスの乱れ、栄養状態の悪化、精神的な不安定さを招く可能性は十分にあると考えます。我々、糖尿病専門医はもちろん、保険適応内で患者さんの病状や生活背景をしっかり把握・考慮したうえで処方しています。また、予期せぬ副作用が生じる可能性も十分に視野に入れて、何か少しでも不具合があった場合は直ぐに対応するよう心がけています。今、保険外であればオンラインで薬剤を購入できる状況になっており、私自身も色々思うところはあります。GLP-1RAはとても良い効果が期待できるお薬であるからこそ、どうか適正に使用して頂き、何とか副作用を最小限に抑えていきたいと心から願っています。
おおやぶ内科・整形外科 副院長 大藪 知香子
糖尿病内科専門医・指導医 総合内科専門医