肥満症に対する、GLP-1の位置づけ??
肥満症に対する治療が大きく変わってきました。以前より、2型糖尿病患者さんの治療薬として使用されてきたGLP-1受容体作動薬(オゼンピック注、マンジャロ注等)ですが、2024年2月より一定の条件を満たせば肥満症に対しても保険適応が認められました。以下、保険適応のある2剤について、少しまとめてみました。
1. ウゴービ(Wegovy)
- 保険適用開始日:2024年2月22日
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適応基準(厚労省および最適使用推進ガイドライン):
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BMI ≥ 35 kg/m² または
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BMI ≥ 27 kg/m² + 肥満関連の健康障害が2項目以上あり、かつ対象疾患(高血圧、脂質異常症、2型糖尿病など)がある。
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対象疾患+食事・運動療法を最低6か月行っても体重管理が不十分(栄養指導は2か月に1回以上)。
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合併疾患に対する薬物治療が適切に行われていること。
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処方施設要件:日本糖尿病学会、日本内分泌学会、日本循環器学会の専門医が常勤し、管理栄養士が在籍する「教育研修施設」(大学病院や大規模総合病院など)であること。
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処方制限:
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発売後約1年間は 一回につき2週間分のみ処方可能。その後、通院・採血が必要。
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運用上の注意点:
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専門施設に限られており、一般クリニックでは処方が難しい。
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最適使用推進ガイドラインに従った厳格な患者選定と管理が必要。
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2. ゼップバウンド(Zepbound)
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保険適用承認・発売日:2025年3月19日に薬価収載、2025年4月11日より発売開始
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適応基準(承認時・ガイドライン準拠)
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BMI ≥ 35 kg/m² または
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BMI ≥ 27 kg/m² + 肥満関連健康障害2項目以上(高血圧・脂質異常症・2型糖尿病など)あり、かつ食事運動療法を行い、効果不十分。
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食事療法は2か月に1回以上、管理栄養士による指導が必須。
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対象疾患(高血圧・糖尿病・脂質異常症等)に対する治療が継続されていること。
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処方施設要件:教育研修施設に限定され、専門医と常勤管理栄養士在籍が必要。
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処方制限:
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ウゴービと同様に、発売直後は2週間分しか処方できない制限あり
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3. 共通する条件
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対象はあくまで「肥満症」であり、単なる体重減少や美容目的は保険適用外となります。
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使用施設は「教育研修施設」(大学病院・大規模病院)に限定されるため、一般クリニックでの保険診療導入にはハードルが高い状況です。
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最適使用推進ガイドラインの遵守(患者の重症度、合併症、治療計画、継続管理、再投与判断など)が求められます。
- 現状、保険診療では大学・大規模病院への紹介が現実的な運用方法になります。
当院での取り組み
今回発売となった2つのお薬。いよいよ日本でも世に出てくると聞いた時、当院でも肥満+健康障害のある方に、積極的に療養指導に加えてGLP-1受容体作動薬を処方していきたい!!と強く思っていました。しかし「教育研修施設」の認定はなかなかハードルが高く、現状では保険内でこれら薬剤を処方するはできません。基本的には、近隣の基幹病院へご紹介させて頂く形となりますが、それでも大病院へのアクセスが難しい場合は、当院でもGLP-1受容体作動薬を自由診療にて処方します。(もちろん、肥満症の条件を満たした方に限定し、フォローアップとしての診療も並行して行います。)もし気になる方がおられたら、ご相談ください。
おおやぶ内科・整形外科 副院長 大藪 知香子
糖尿病内科専門医・指導医 総合内科専門医