新年、あけましておめでとうございます。
皆さまにおかれましては、良いお年をお迎えのこととお慶び申し上げます。
年末から厳しい寒さに見舞われましたが、変わらずお元気でお過ごしでしょうか。
以前のように、自由な環境へ戻るにはまだ時間がかかりそうですが、少しずつ、withコロナとして社会全体が安定、前進することを願っています。
さて、年末年始といえばクリスマスやお正月といった華やかな行事がたくさんありますね。(以前は忘年会シーズンというのもありましたが、最近は控えられているようですね。)我が家も、クリスマスチキンやケーキ、年越しそば、お節にお餅、少しのお酒・・など、色々と堪能しました。
そして『寝正月』という素晴らしい言葉もあったり、さらにコロナ禍や厳しい寒波の状況も重なり、家で過ごす時間が長く、活動量が低下している方も多いのではないでしょうか。
どうしても、体重計から足が遠のきますね・・・。
日本人が最も太りやすい季節はいつ?
これまでの研究で、日本人において、体重には季節変動があり、
中でも『1月と5月が一番太る』ことが報告されています。
参考;Helander EE, et al. N Engl J Med 2016.
この図によると、緑色のラインが日本のデータ(オレンジがアメリカ、青がドイツ)です。
新年(1月)とゴールデンウィーク(5月)に体重変化が最も増加しているのが分かります。
他国でも、新年やイースター、感謝祭などの休暇に合わせて太りやすくなっている事が分かります。
そしてこの体重増加は、同時期に身体活動量を増やしても、なかなか抑えきれないということも言われております。(休暇でウォーキングやゴルフ、アクティビティの時間が増えても、それ以上に食べているということでしょう。)
私個人的には、年に1回の楽しい行事であれば、思う存分楽しんでしまっても良いのではないかと考えています。
もちろん患者さんの病気の程度によっては、それでも気を付けなければならないケースもあります。
ただ、血圧が高いから、糖尿病があるから、〇〇は食べてはいけない、ということはないかと思います。
せっかくの1度切りの大切な人生ですので、一生我慢し続けるよりは、病気を持たない方と同等の幸せを感じられるよう、上手くやり過ごしてほしいという気持ちで日々診療しています。
逆に、日頃から塩分や糖質量に気を使っている方は、行事ごとの際であってもある程度のブレーキが効くような印象があります。
『日頃はやや控えめに、特別な日は思いっきり楽しむ』ことを、おすすめします。
かくれ肥満とは・・?
日本人は欧米人を比べて、高度肥満(BMI≥35)の割合は0.2~0.3%とまだ少ない状況です。
BMI(体格指数);体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
ただ、軽度肥満や正常体重であっても糖尿病などの生活習慣病を発症しやすいケースがあり、
これは『かくれ肥満』と呼ばれています。原因として、脂肪の『質』に問題があると指摘されています。
実際、肥満がないためにあまり病気のことを意識しない人も多く、結果的に重大な病気(糖尿病や動脈硬化疾患)に気づくのが遅れることも多々あります。また、『痩せ』タイプであっても『かくれ肥満』であることもあり、特に日本人においてはこのスクリーニング(ふるい分け)が非常に重要です。
参考にするのは、順天堂大学の『アディポネクチン』にかかわる研究です。
(J Clin Endocrinol Metab . 2021 Apr 23;106(5):e2228-e2238.)
『アディポネクチン』とは、脂肪を燃焼させる働きがあり、『痩せホルモン』、『長寿ホルモン』などと言われています。
この研究は、正常体重の日本人男性(100名)を対象として、このアディポネクチンや脂肪について調査したものです。
結果、『脂肪の質』を示す『アディポネクチン濃度』が低いことが、糖尿病や高脂血症、内臓脂肪蓄積になどの重要な病気の原因であることがわかりました。
日本人をはじめとするアジア人では、肥満でなくとも2型糖尿病などの生活習慣病を発症するケースが多く、その大きな原因にアディポネクチンが深くかかわることが初めて分かりました。
現在、日本の特定健診(メタボ健診)では、体重やBMI、腹囲(男性で85㎝以上、女性で90㎝以上)などを用いて内臓脂肪量を評価し、肥満予防の対策がすすめられています。
この研究結果から、今後は脂肪組織の量のみならず、『質』に着目した取り組みが必要であることも考えられます。
『やせホルモン』を増やすためには?
『やせホルモン』と言われるアディポネクチンを増やすために、様々な可能性が報告されています。
食品では、①大豆、②青魚、③海藻類、④木の実、⑤緑黄色野菜、などでの研究結果がなされております。
これらはアディポネクチンだけでなく、様々な生活習慣病に対して良い影響を与える事が言われており、改めて積極的な摂取をおすすめします。
逆に、お肉(特に脂身の多い牛肉、豚肉)や乳製品などの動物性たんぱく質や脂肪(チーズ、バター、生クリーム、マヨネーズ)、過度な炭水化物(主食、麺類、芋類、果物)、お菓子や糖入り飲料は、ダイエットには不向きなので極力ひかえましょう。
もちろん、運動は最も重要です!アディポネクチン低下させる内臓脂肪を増やさないために、積極的な有酸素運動はとても有益です。
ジョギングやサイクリング、スイミングなどが出来る方はぜひ、楽しみながら継続しましょう。
あまり運動習慣がない方は、①いつもより少し速く大きく歩く、②早朝のラジオ体操やストレッチ、③ウィンドウショッピング、④家の周りのお掃除、といったことでも構いませんので、ストレスなく継続できる方法で始めてみましょう。
外に出るまでは億劫ですが、ひとたび動くと意外とあっという間に時間が流れます。
皮下脂肪に比べて、内臓脂肪のほうが燃焼やすいといわれています。
まずは、この冬に貯め込んだ内臓脂肪を、楽しく身体を動かして消費させましょう!
皆さんの理想体重に近づくと、心も身体も軽くなり、日々がより楽しいものになるかと思います。
2022年、
皆さまにとって、健康で幸せな一年となりますよう心から願っております。
おおやぶ内科・整形外科 副院長 大藪 知香子
糖尿病内科専門医・指導医 総合内科専門医