意外と知らない、『HbA1c』のキホン
今回は、HbA1cについてです。
HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)はご存知でしょうか。
Hb(ヘモグロビン)とは、赤血球の中にあり、酸素を運ぶ重要な役割をしています。
(Hbが低いと「貧血」と診断される…ことで有名でしょうか。)
ではHbA1cは何でしょう?
HbA1cは健診や人間ドッグでもおなじみ、「糖尿病の診断」に用いられます。
先ほど出てきた貧血に関わるHbは、酸素だけでなく糖もくっつきやすい性質があります。
過去(1950-60年代)に、Hbに関わる病気の研究がなされていた時代、
Hbの中でも糖がくっついたものが、『HbA1c』(糖化ヘモグロビン)として同定されました。
そのHbA1cが糖尿病患者さんの血液中に多いということが分かり、
糖尿病の指標として使われるようになりました。
この、HbA1cから、何がわかるのでしょう?
約1~2か月間の平均的な血糖コントロールをあらわしています。
Hbを含む赤血球の寿命が120日間(4か月)と長いため、
糖化されたHbであるHbA1cの割合は、すぐ変化しないのです。
血糖値が『今日のテストの点数』なら、HbAc1は『学期末の成績表』、のような感じです。
『HbA1c』の見方は知っていますか?
おおまかにコントロールをまとめます。
糖尿病の診断方法に関しては、こちらを参照してください。
①まず、糖尿病と診断されていない場合、
HbA1c 5.0~5,5% 健康な人 (平均血糖 90~100 mg/dl)
HbA1c 5.8~6.4% 糖尿病の予備軍 (平均血糖 110~120 mg/dl)
HbA1c 6.5%~ 糖尿病型 (平均血糖 126mg/dl~)
HbA1cが6.5%を超えた場合、『糖尿病』と診断されます。
(ただし、同時に測った血糖値が低い場合は、別の日に再検査することがあります。)
②すでに糖尿病と診断され、食事・運動・お薬などによる治療を行っている場合、
HbA1c 5%台 ほぼ正常
HbA1c 6%台 軽症 将来的に動脈硬化(血管の老化)が進む
HbA1c 7%台 中等症 糖尿病合併症(心臓・脳、腎臓、神経、眼)を来たす
HbA1c 8%台~ 重症 合併症に加え感染症など様々な病気が重症化しやすい
これまでに健診等でHbA1cを検査されたことがある方、いま糖尿病と診断され治療を受けられている方は、
一度、照らし合わせてみてください。
『HbA1c 7%』の壁!
『熊本宣言』とはご存知でしょうか。
熊本宣言2013
日本糖尿病学会は、糖尿病の予防と治療の向上に取り組んでいます。
糖尿病は、放置すると、眼・腎臓・神経などに合併症を引き起こします。
また、脳梗塞や心筋梗塞などの動脈硬化症も進行させます。
糖尿病となった方が健康で幸福な寿命を全うするためには、
早期から良好な血糖値を維持することが重要です。
血糖の平均値を反映するHbA1c(ヘモグロビン・エイワンシー)を7%未満に保ちましょう。
あなたとあなたの大切な人のために
Keep your A1c below 7%
2013年5月16日 熊本にて
日本における食生活の変化(和食→多国籍食)や運動不足(車社会)、
その結果引き起こされる肥満、内臓脂肪の蓄積が原因となり、
日本人の約2000万人(成人5人に1人)が糖尿病か糖尿病予備軍との状況になりました。
糖尿病網膜症による失明者は年間3,000人以上
糖尿病腎症による新規透析導入者は年間16,000人以上
糖尿病足病変による下肢切断者が年間3,000人以上
糖尿病患者さんにとって、いかに合併症を起こさず、進行させない事がとても重要です。
またさらに、糖尿病患者さんが、糖尿病でない健康な人と変わらない人生を歩める事が最大の目標です。
熊本県で1987年から10年ほどかけて行われた2型糖尿病患者さんの研究より、
『HbA1c 6.9%未満』なら糖尿病合併症を来す可能性が少ないことが分かりました。
糖尿病患者さんが健康で幸福な寿命を全うするために、
糖尿病による合併症を起こさないために、
合併症と闘っている患者さんの病気がこれ以上進まないように、
多くの糖尿病患者さんにおける血糖コントロール目標値を
『HbA1c 7% 未満』と宣言されました。
私も仕事や家庭・育児に追われている本当に忙しい時期、
食生活が乱れて一時的にHbA1c 5.8%!まで上がったことがありました。
今思うと、食事の代わりにチョコレートや果物ばかり食べていた気がします…。
『HbA1c 5.8%』とは、それほど問題ないかと思うかもしれませんが、
知らずにそのまま放置すると、気づかぬうちに動脈硬化(血管の老化)を早めていたことでしょう。
HbA1cが高いのにまだ治療していない方、HbA1cがなかなか下がらないままの方、
もしこのような方がおられたら、早めに可能なら専門医へ相談していただくことをおすすめします。
HbA1cの値にも弱点(貧血があると値がブレる等)があり、それについてはまだ後日お話します。
おおやぶ内科・整形外科 副院長 大藪 知香子
糖尿病内科専門医・指導医 総合内科専門医