塩分補給は本当に必要?

 

暑い時期になるとメディアでは熱中症対策として「水分と塩分を補給しましょう」と注意喚起され、市場でも塩分の入ったお菓子や飲料が多く出回ります。

水分補給はどんな時期でも必要で、特に夏は皮膚からの水分の蒸発や発汗による水分の喪失が多くなるため、熱中症予防のためにも十分な水分摂取が望まれます。

しかし、塩分補給は本当に必要でしょうか?

 

汗から出ていく塩分量は?

汗に含まれる塩分は0.3~0.4%程度といわれています。つまり単純計算だと500ccの汗をかくと2gの塩分が失われることになります。

しかし、ヒトは体内の塩分量(ナトリウム量)を一定にするはたらきがあるため、よほど長時間の激しい運動でない限りそこまで塩分が失われることは少ないでしょう。

 

推奨されている塩分摂取量と実際

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準2020年版」では1日の塩分摂取量は男性7.5g、女性6.5g未満を推奨しています。また、高血圧の患者さんにおいては塩分制限が重要はで、日本高血圧学会で1日6g未満を推奨しています。高血圧の方だけでなく心臓病・腎臓病の方も同様です。

それに対して日本人の塩分摂取量は1日あたり男性10.9g、女性9.3gとなっています。

※参考:厚生労働省による「国民健康・栄養調査」(令和元年)

つまり、日本人は日常的に塩分を多く摂っているのです。

 

以上のことから、暑い夏であっても日常生活で汗をかく程度では意識的な塩分補給はあまり必要ではないでしょう。また、血圧管理の必要な病気の方に関しては、塩分補給は病気を進行・悪化させる原因となります。汗をかく季節であっても減塩に努めましょう。

 

最後に、水分補給の量と飲み方

厚生労働省によると、成人が1日に必要とする水分量は2.5Lです。そのうち、食事から摂っている水分が約1L、体内で作られる水分が約0.3L残りの約1.2Lが少なくとも飲料水で摂る必要のある量となります。

身体は一度にたくさんの水分を吸収できないので、大量の水分を一気飲みするのではなく、コップ一杯ずつこまめに水分補給することをおすすめします。特に入浴中や就寝中にはたくさんの汗をかきます。「入浴前」「入浴後」「就寝前」「起床後」にも水分補給をしましょう。

※ただし胸水や透析などで水分制限のある方は決められた水分量を守りましょう

参考:厚生労働省「健康のために水を飲もう」推進運動

 

おおやぶ内科・整形外科

管理栄養士・糖尿病療養指導士

和歌﨑 清香