この度、ヤクルトさんのパンフレット『乳酸菌のココロ』8月号のテーマが『糖尿病』ということで、当院から記事を掲載させていただきました。その内容を少し変えて、こちらでも紹介したいと思います。
◆まずは、夏の生活習慣チェック◆
あなたの夏の過ごし方に当てはまるものはありますか?
- 脱水・熱中症対策に! 冷たいジュースやスポーツドリンクをしっかり飲む
- 夏の幸せ! 毎日のアイスクリームやアイスキャンディー、かき氷は欠かせない
- 食欲がない日ものど越しが良い!そうめん、そば、うどん、冷麺が好き
- 今が旬!スイカ、モモ、ブドウ、メロンなどの果物を満喫したい
- 外は猛暑で体にこたえる!1日中、涼しい部屋でゆっくり過ごす
上のチェック項目のうち、あなたはいくつ当てはまりましたか?
1つでも当てはまる方、これらはすべて夏に血糖値を上げてしまう習慣(落とし穴)です。このような生活が続くと、気づかないうちに糖尿病になってしまうこともあるので、気を付けてくださいね。
血糖の季節変動
血糖値は、食事や運動、ストレスなど色々な影響によって1日の中でも絶えず変化しています。またこれまでの研究で、1年の間でも季節によっても変化することが知られており、冬(12月~2月)は血糖値が高く、夏(6月~8月)は下がる傾向にあります。つまり、今の季節は血糖を下げる良いチャンスだったといえます。そしてこの影響は、涼しくなる頃までしばらく続きます。暑さが和らいで動きやすくなる季節、爽やかな朝に少し歩いたり、休日に遠出したりして、活動量を増やしてみてはいかがでしょうか。
よい季節に健診で見直し
夏や冬は様々なイベントがあり、食生活・アルコール習慣も乱れがちですね。これからの秋シーズンは、日常生活も少し落ち着く頃かと思います。食欲の秋、運動の秋、読書の秋、芸術の秋・・・色々なことに触れて感性が高まる良い季節です。
夏の暑さでなかなか外で運動が出来なかったり、ついつい間食やジュース・アルコールが増えて夏太りしてしまった方もいるかもしれません。また、冬になると血圧が上がったり、代謝が落ちたり、外出する機会が減ったり、さらに年末年始のイベントも増えて、生活習慣病は悪化することが多くなります。
この安定した季節に、健診を受けてぜひ身体のメンテナンスをしてみてはいかがでしょうか。
『食後高血糖』 隠れ糖尿病をいち早く見つける
血糖値は食べた後、一時的に高くなりますが、健康な人なら速やかに膵臓からインスリンが分泌されて、2時間後には正常に戻ります。食後2時間の血糖値が140mg/dl以上ある場合は食後高血糖と呼ばれ、この状態が続くと『糖尿病予備軍』である可能性がぐんと上がります。たとえ予備群であっても、動脈硬化(血管の老化)を進めてしまうことが分かっており、将来的に脳卒中や心筋梗塞を引き起こす第一歩となります。日頃から定期的な健診などは受けておきましょう。ただし、空腹時血糖値は正常でも、食後血糖値だけ大幅に上がる『隠れ糖尿病』の人はなかなか診断がつかないので、心配な方は病院で相談してくださいね。
注目されている『腸内細菌』??
このところ注目を浴びている『腸内細菌』ですが、これはヒトの腸の中で生きている細菌たちです。100兆個以上の細菌が存在し、個々の最近が集まって腸内細菌叢(腸内フローラ;お花畑)を形成しています。
腸内細菌は、栄養素の分解・吸収や免疫・防御機能など、様々な役割を担っています。さらに最近、糖尿病の患者さんは健康な人と比べて、腸内フローラが異なっていることが分かってきました。多くの糖尿病の人に特徴的な『インスリン抵抗性』と呼ばれる状態(インスリンがうまく効かず、なかなか血糖値が下がらない)に、腸内フローラの乱れが関わっていると言われています。逆に言えば、早いうちから腸内フローラのバランスを整えることで、糖尿病の予防や改善につながることは間違いなさそうです。
ビフィズス菌などの善玉菌を増やすと、腸内フローラを整えることができます。そのためには、
発酵食品(ヨーグルト、納豆、チーズ、味噌など)や食物繊維(野菜、きのこ、海藻など)、オリゴ糖をしっかり食事に取り入れることがポイントです。
ちょうど、秋の季節に温かいお味噌汁やきのこをたっぷり使った料理は活躍しそうですね。
おおやぶ内科・整形外科 副院長 大藪 知香子
糖尿病内科専門医・指導医 総合内科専門医