7月に入り厳しい暑さになってきましたが皆様いかがお過ごしでしょうか。

 

今回のテーマはこの時期に気を付けたい「熱中症」です。

日本の夏は気温が高いだけではなく、蒸し暑いのが特徴であり、夏季の気温上昇が進むとともに熱中症患者さんの急激な増加が近年問題となっています。

熱中症とは

熱中症は体温の上昇により、体内の水分や塩分のバランスが崩れることで、めまい・筋肉痛・頭痛・吐気・倦怠感などの様々な症状を引き起こします。重篤な場合には意識を失ったり、痙攣などを起こすことで危険な状態になることもあります。

糖尿病と熱中症の関係

糖尿病のある方は熱中症になるリスクが高いとされており注意が必要です。水分補給や涼しい環境づくりを行って暑い時期を安全に過ごしましょう。

血糖コントロールが悪い状態が続くと汗をかきにくくなり、身体を効率的に冷やすことができなくなってしまいます。また高血糖では尿の量が多くなることで身体の中は脱水になり、いずれも熱中症のリスクが高い状態です。
また気温の高い夏には運動療法が普段どおり行えなくなったり、糖分が多く含まれた飲料を飲むことで血糖コントロールが悪化してしまうことがあります。涼しい時間帯に運動する習慣をつけたり、糖分が多い飲料を控えるようにすることが大切です。スポーツドリンクにも多くの糖分が含まれているため注意が必要です。スポーツドリンクを飲む場合は、ゼロエネルギー(正確にはわずかにエネルギーがある)のものをお勧めします。
インスリン注射に関しては、高温や直射日光によってインスリンが影響を受けて効果を失ってしまうことがあるため、そのような環境を避けるように保存方法に注意しましょう。

暑い日はインスリンが効きやすくなる

気温が上がり、皮膚が温かくなると血行が良くなり、注射したインスリンが効きやすくなります。低血糖に気をつけましょう。熱中症かな?低血糖かな?と悩んだら、可能なら自己血糖測定をしてみて下さい。もし車の運転中等の理由で測定が難しい場合は、ブドウ糖かジュースを服用することになりますが、その後の急激な血糖上昇には注意が必要です。

熱中症の予防

① 喉の渇いた時、以外にも水分をしっかりとりましょう。ただし、糖分の多い飲料は避けましょう。水分補給は、水か麦茶がいいと思います。暑い日は身体から水分だけでなく塩分も失われます。塩気も補充しましょう。コーヒーや緑茶は利尿作用があるので、合わせて水も飲んで下さい。

水分や塩分の制限を指示されている場合には医師とよく相談するようにして下さい。

② 気温と湿度に注意しましょう。
気温だけでなく湿度が高い時も熱中症のリスクが高くなります。日差しを避けて、衣服は通気性の良いものを選びましょう。室内でもエアコンなどで室温を適度に調整、冷却グッズを利用しましょう。首・脇の下・足の付け根を冷やすと効率よく体を冷やすことができます。

③ 体が暑さに慣れてない時期が危険です。
梅雨明けなどの気温が上がり始める時期に熱中症のリスクが高くなります。室内・室外での適度な運動で少しずつ暑さに体を慣れさせていきましょう。日頃からウォーキングなどで汗をかく習慣を付け、暑さに慣れるようにしましょう。夏の暑さに負けない体を準備できるだけではなく、血糖値の管理も改善すると考えられます。猛暑が続くと熱中症のリスクも上がり、普段通りの運動はしにくくなってしまいますが、良好な血糖値を保つには運動が欠かせません。熱中症にならないように注意し予防しながら運動を行いましょう。

・屋外で運動を行う場合

なるべく気温の低い早朝や夕方に運動を行いましょう。また、服装も熱がこもりにくい風通しのよいものを選び、帽子で直射日光を避けるようにしましょう。

・屋内で運転を行う場合

なるべく室温は28℃以下、湿度は70%以下になるように冷房などを使い調整しましょう。

糖尿病のある方の場合は暑さに対する感覚が鈍くなっている可能性があります。体感ではなく、温度計や湿度計を見て環境を調整することも大事です。

 

 

熱中症について糖尿病のある人が注意しなければいけない点をお話ししてきましたが、いかがでしたでしょうか。以上のことに注意して暑い時期を安全に過ごして頂けたらと思います。充実した日々を送っていただけたら幸いです。

 

引用・参考文献

・糖尿病と熱中症 月刊 糖尿病ライフ さかえ2023年6月号 P8~13

環境省熱中症予防情報サイト 夏季のイベントにおける熱中症対策ガイドライン 2020(環境省)

熱中症環境保健マニュアル 2022(環境省)

 

おおやぶ内科・整形外科

看護師・糖尿病療養指導士

森 友美